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聖戦士ダンバイン
− 聖戦士伝説 −


「エレ・ハンム」

※状況説明 (カオスルートです)
エルフ城をめぐる戦いの最中、マーベルと地上へ出てしまったシュンジ。
力をあわせてバイストンウェルへ帰還した2人の前に、かつてシュンジが討ち取ったピネガン・ハンムの娘、エレが現れる。

「あなたはまだドレイクの恐ろしさに気付いていないのです。」
少女がまっすぐに見つめて言う。
これが父親を殺した人間に対する対応とは思えないほど冷静だった。
これが王家の血というものかもしれない。
「気付かなかったのはあなたがたではありませんか?」
泣き叫んで糾弾されればこんな事は言わなかったろう。
シュンジの言葉にエレは元より居合わせたパット、マーベルも面を喰らったように次の言葉を待つ。
「我々は、リの国は長らくガロウ・ランと強獣に脅かされてきた。いわばコモン界の壁となって必死になって戦ってきたんです。
私はガロウ・ランに滅ぼされた街を見ました。ドレイクがどれほどの悪行を行おうと、あれより酷い事は無いはずです。
人間が原型を留めぬまでに引き裂かれた惨状などあなた方には想像もつかないでしょう。
その中で我々に手を貸してくれたのはアの国でも、あなた方でもない。
一地方領主に過ぎない、まして同じ問題で苦慮していたドレイクです。彼は貴重なオーラマシンを無償で貸してくれました。
思惑はともかくそれが現実です。
恩人を裏切り、援助どころか辺境諸国の内情すら知ろうとしなかったあなた方に着く事などできるとお思いですか?」
シュンジは出来る出来ないでは無く、ドレイクを産み出した責任はアの国だけではないと言いたかった。
まったくの部外者である自分ですら、あの惨状を繰り返さないためなら何でもしようと思った。
打ち続く戦、疲弊する領土、そして何の援助もよこさない愚王。
ドレイクが現状の打破、野望を持ったとしても無理なからぬ話しだとシュンジは思っていた。
ドレイクはアの国だけでなく、自分達が壁となる事で守られてきたコモン界すべてに復讐しようとしているのかもしれない。
  エレもその事に気付いたのであろう。唇を噛み締め項垂れる。
マーベルにしてもギブン家が隠し工場をリの国に作った経緯を理解しているだけに反論する事ができなかった。
「…それでもドレイクは止めねばなりません。」
絞り出すようにしてエレが呟く。今度はシュンジがエレをまっすぐと見つめた。
「皆が皆、あなたのような信念の持ち主ではありますまい。
ラウの国が、あなたの祖父フォイゾン・ゴウがこの事態を利用しているとは思えませんか?」
これには流石にエレも怒りを感じたのかカッと顔が赤らむ。
しかしおどろくべき精神力で次の瞬間には元に戻っていた。
母方の祖父にあたるラウの国王フォゾンが父であるピネガンと不仲であった事はエレも知っている。
ミの国をダシにしてラウの国が勢力拡大を図ったとは信じたくはなかったが、
キロン城陥落後のラウの動きは勘ぐられても仕方のないほど迅速だった。
「お父上は最後まで武人であられた。ご立派です。エレ殿は国を失ったとはいえ、その血を引いておられる。
必ずや再興を成すでしょう。その時は全力をもってお相手します。」
シュンジが一礼しダンバインへ向かう。
誰も声を掛ける事はできなかった。


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