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聖戦士ダンバイン
− 聖戦士伝説 −
※状況説明 (カオスルートです)
ついにフォイゾンを討ち取り、大国ラウの国を滅ぼしたシュンジ。
機械の力を活かすことで得た勝利はこの世界の「理」をかえる事ができるのか。
残るナの国への侵攻を前にシュンジは更なる力を手に入れようとしていた。
タータラ城。
大国ラウの王城である。
いや、王城だったのだ。つい数日前まで。
独特の飛翔音に中庭を改造したマシン発着場の管制員が空を仰ぐ。
青い塗装を施した大型のABが見事な機動で着陸する。
その様を見て管制官は感嘆の声を上げた。
甲虫を思わせる頭部、体中に装備された火器。
見る者を威圧せずには居られない重オーラバトラー、レプラカーンだ。
管制官が合図を送るまでもなく出迎えに出ていた人影が青い機体に歩み寄る。
レプラカーンの胸部ハッチが開き、同色の鎧に身を包んだ若者が降り立った。
「これは、ショット殿。出迎えなど不要と申し伝えましたのに。」
「噂に名高い『青の聖戦士』を出迎えなかったとあれば御館様に申し開きができません。」
「ははは、止してください。」
「それに…」
ショットが言葉を切ってレプラカーンを見上げる。
「コレをここまで乗りこなしてくださった。設計者として御礼申し上げます。」
レプラカーンはもともとショット、アの国が開発したものだ。
敵対するラウ、ナの開発したオーラバトラーに現行機では力不足になったからである。
しかし、ショットの思惑に反して量産は細々とされるに留まった。
理由の1つは急速に戦線を拡大したアの国にとって、質の向上よりも絶対数の補充が優先されたからだ。
量産を前提に開発されたドラムロに比べ、レプラカーンは二倍強のコストが掛かる。
さらに内蔵火器の殆どに従来のフレイボムではなく銃砲類を搭載した事で運用コストも跳ね上がっていた。
それともう1つ大きな理由は銃器による戦闘を嫌うコモンの体質がある。
ショットにしてみればナンセンス極まりないのだが、地上人とは言え技術者に過ぎないショットでは戦術思想の転換など出来はしなかった。
その証拠に同時期にクの国で開発された接近戦重視型オーラバトラー「ビアレス」が上級騎士達の強い要望によってアの国でも正式採用されている。
これはオーラマシン開発の第一人者であるショットには屈辱的な出来事だった。
「礼を言うのはこちらの方です。レプラカーンは良いマシンだ。これなくしてラウと対等には戦えなかったでしょう。」
ことレプラカーンについては2人の思惑が互いの利益となった。
ゼラーナのゲリラ戦法を撃退した見返りとしてリの国へレプラカーンを譲渡するよう根回ししたのはショットだった。
同じ地上人であり、リの国王という立場にあるこの若者ならレプラカーンを正当に評価してくれるのではと考えたからだ。
一方、ボゾンやボチューンといったラウの新型ABにドラムロでの力不足を感じていたリの国にとっても新型機は渡りに船だった。
譲渡された1機はさっそく実戦に投入され、即座に量産が決定。
一ヶ月後のナブロ攻略戦ではドラムロに変わる主力機として威力を発揮した。
兵力の少ないリにとっては質の向上こそ急務だったのである。
ナブロの砦、それに続くタータラ城の陥落はリの騎団、ひいてはレプラカーンの大量投入によって成されたと言っても過言ではなかった。
ショットにとってはこれほど溜飲の下がった事は無い。
上級騎士共の面目は丸潰れである。
城内に設けられた格納庫に1体のオーラバトラーが鎮座していた。
巨大なオーラコンバーター、漆黒の機体、猛禽類を想わせる力強い脚部。
シュンジはしばし、その姿に見とれた。
「素晴らしい。新型の重オーラバトラーですね。」
「はい。ズワァースともうします。」
「ズワァース…」
レプラカーンは決して万能では無い。
火力を強化した反面、重量の問題から装甲の強化は見送られていたし、
射撃時の安定性を第一に設計されたオーラコンバーターは加速性に劣っていた。
一見しただけでもズワァースはその欠点を全て克服しているように見える。
「今回の用件はこれですか。…で、どのような条件でお譲り頂けるのです?」
「適当な代価で。それ以上は求めません。」
ショットが計算高い男だと言う事はシュンジも知っている。
疑念が顔に出たのか一瞬の後にショットが笑いながら続ける。
「タータラが落ちた今、残る敵はナの国のみ。リの騎団には益々ご活躍をして頂かねば…。
第一、今のアの国にコレを量産できる余裕はありませぬ。造り手としてこのまま腐らせるには惜しいですからな。」
結局の所、戦いの趨勢が見えた今、リの国に恩を売っておきたいという腹か。
いや、ここで玩具を与えておけば後は勝手にナへの先陣を務めると見られているのかもしれない。
ウィルウィプスの建造に加え、国内、さらには占領した旧ミの国の平定に手一杯のアの国、
ドレイクにとってはリの国の財政を切り崩す意味合いもあるのだろう。
現に性能的なバランスも良く、量産性も高いライネックは度重なる要請にもかかわらずリの国への譲渡は行われていない。
ドレイク、ビショット、そしてシュンジ。
結局は己の野心の上で手を組んでいるに過ぎないのだ。
共通の敵が滅べば互いに牙を剥き合うのは必定だった。
ラウ攻めでもそうだったようにリの騎団を矢面に立たせる事で「来るべき戦い」に備え自国の兵力を温存するつもりだろう。
しかしそれはシュンジにとって望むところだった。
国力で劣るリがアやクと張り合うには少数精鋭、練度の向上しかない。
アの国は急激な軍備拡大で練度と戦意が低下しており、
クの国に至っては戦意こそ高いが機械化以来、満足な大規模戦闘を経験しておらず練度は比較するまでもない。
一度の実戦は三ヶ月の訓練に勝る。
その事をドレイクやビショットは身を持って知る事になるだろう。
ズワァースの性能と共に…
「ご期待に応えられるよう、努力しますよ。」
ショットに笑みをかえしながらシュンジは想う。
この世界にとって自分達が「悪しき存在」だったとしても…、
今はまだ立ち止まるわけにはいかない。