RISING SUN
MEDAL of HONOR
 − RISING SUN −


太平洋戦争を「ゲームする」という事
ライジングサンで敵が日本だという事に抵抗を感じた人は多いと思います。 「たかがゲーム」気楽に楽しもうという意見はもっともです。 政治的信条や歴史認識について押し付けたり論議したりする気はありません。 今回のライジングサンについてこういう意見もあるのだという事を知ってください。 (以下の内容は発売前の2003年10月中旬に当掲示板に書き込まれたものです) >管理人の意見
◆「乱文失礼致します。」 投稿者:マ弾ペイペイさん 初めまして、管理人様。マ弾ペイペイと申します。 HP拝見させて頂きました。 今日カキコさせて頂いたのは一つ疑問に思った事があり、 是非皆様の御意見をお伺い致したく思いましてキーを叩いております。 HPの冒頭にもありましたが、新作の対日戦ゲームが発売される様ですね。 ライジングサンという。 単刀直入に申しましてこういった方向性のゲーム、私は非常に抵抗を感じます。 抵抗といいますか、嫌悪といいますか、非常に悲しくもなります。 戦後半世紀経過後も(ベトナム題材以外は)娯楽と正当化プロパガンダ両立を狙ったとしか思えない 戦争映画を延々と垂れ流し続ける米国人が製作したゲームなのでその点何も驚く事は無いのですが、 そういったゲームの日本版を平然と製品化する日本人が存在するのですね。 その人達はゲームとして面白ければ良い、表現の自由だ、といった程度の認識しか無いのでしょうか。 何も日本を徹底崇拝せよという事ではありません。 ただ当時亡くなって行った英霊達の事を思う事すら出来無かったのでしょうか。 仮に思っていればこの様な事はできない筈です。 EAの公式HPで鼻高々と『当時の戦場の状況を徹底監修』などと、笑止千万です。 当時の状況をリアルに再現し、プレーヤーたる日本人である自分が米兵になりきり、 同じ日本人兵士を英雄的に殺戮する。たかがゲーム、でしょうか。 違います。 戦争について正しい見識を持つ事が戦勝国、敗戦国国民双方共にいかに難しいかは戦争について 知識のある方ならばお分かりになると思います。 真珠湾ですら未だにルーズベルトの知らなかったフリ論が一般にはタブーな位ですから。 故に戦争について知識の乏しい人が興味本位でこういったゲームに興じる事により、 明らかに見識的に誤った方向へ誘われるのは論を待たない所と思います。 やはりPS2のような明らかに大衆的な媒体でこういった題材を採用するのは大いに問題があると思うのです。 ジェームズボンドの様な架空性を持たせなければならないと思うのです。 どうしてもやるならば標的を個人的趣向性の高いパソコン程度で止めておく必要を感じます。 (パソコンも相当庶民に浸透している現在ですが。) 大東亜戦争は正当化する様な物ではありません。 大局的に見て中国、朝鮮侵略等当時の日本が明らかな過ちを犯したのは事実であると私も認識しています。 しかしだからといってそれぞれの日本兵を愚弄する行為が許されるのでしょうか。 よくNHK等で南方の戦地で犬死にしていった哀れな日本兵といった軽率な放送が絶えませんが、 確かに素人が客観的に見てただ無念に死んで行っただけの兵士達も大勢いたでしょう。 しかし本気で祖国を護る事を信じ、ついえていった兵士達も大勢いた筈です。いくら洗脳教育があってでも、 あそこまで凄惨な戦いができる国が日本以外にある訳がありません。 私は実際に餓島で戦闘を体験された方とお話した事がありますが、 日本と云う国が現在も残った、それだけでも命を賭けて良かった。ともおっしゃっていました。 地獄の様な戦闘で各地で最後迄米軍を恐怖に陥れ、それにより結果として敗戦となっても米国人の 日本人に対する畏怖の念が保たれ完全な征服は免れ現在に至る、詭弁と云われればそれまでですが、 『実際の戦争』という題材はこういった物凄く巨大な十字架を背負わなければならない事を ゲームメーカーの人達にも今一度留意してもらいたいのです。 戦勝国の軽率な権利の行使が多くのドイツの人達を前作で傷付けた事と思います。 このHPを拝見した際、管理人様の軍事に関する知識の豊富さを感じました。 只の軍事オタクばかりが蔓延る昨今、管理人様は人間的観念もとても豊かであると感じました。 (HP内でいくつか触れていらっしゃいましたね。)故にこの様なレスをつけずにはいられませんでした。 御理解頂けるかと期待を致しました。唐突に二十歳そこいらの青二才が支離滅裂勝手な事を申しました事、 どうか御容赦下さいませ。もしお差し支えございましたらどうぞ削除して下さいませ。 御意見お聞かせ頂ければ幸いと存じます。乱文失礼致しました。
「マ弾ペイペイさんへ」投稿者:管理人   熱意の感じられる文章ありがとうございました。 ライジングサンに関する憤りは理解できます。 歴史的解釈に関してはここで論じても結論の出るものではありませんので 極力ゲームに関する内容に絞ってお答えしたいと思います。 マ弾ペイペイさんの感じられている「疑問」とは… 1.ライジングサンに対するメーカーの姿勢 2.ゲーム(媒体)における大戦物の扱い方 の二点にまとめられると思います。 まずは1つづつ… 1.メーカーの姿勢 その昔アメリカで大ヒットして日本へ移植された「WINGS」は 移植に際しプレイヤー側が日米逆転するという配慮がありました。 ゲーム自体が日進月歩の昨今、 作業量を考えれば簡単に比較できるものではありませんが やはり今回の「ライジングサン」は選択として残念だと感じています。 ここからは何の裏づけも無い個人的な意見だと思ってください。 MOHはパソコンでも数本がリリースされている人気シリーズ。 店頭で見かけるものは対独戦を題材にした物ばかりです。 前作PS2版MOHはそれなりのヒットをしたと思いますが、 パソコン版ユーザーの「取り込み」には失敗したのではないでしょうか? 「同じ題材(対独戦)ならパソコン版のほうが良い」 パソコン版はプレイしたことはありませんが、 拡張性やプラットフォームの性能差を考えてもそういうユーザーは多いはずです。 それらパソコン版ユーザーを取り込むには「パソコン版には無いセールスポイント」 が必要… それが対日戦、ライジングサンへ行き着いた背景ではないかと推察します。 そこにマ弾ペイペイさんの言われるような「英霊達の事を思う事」云々といった感情はありません。 ライジングサンの企画自体が「大戦物を再現」という趣旨で対日戦を選択したわけではなく 単純に、「MOHシリーズに無い新要素」として対日戦が選択されたのですから。 (それに元々MOHはアメリカ発祥なので企画の主導はアメリカ人なのでしょうし) 別の見方をすると、大戦物を題材としたコンシューマーゲームは日本では白眼視されます。 これこそ悲しい現実だと思うのですが、仮にマ弾ペイペイさんの満足されるような内容のゲームは 製作発表の段階で「太平洋戦争を美化するもの」といったようなクレームが必ず出ると思いませんか? それが「米兵になりきり、同じ日本人兵士を英雄的に殺戮する」ゲームなら、 こうして何の問題もなく発売日が決定してしまうんです。 1ゲームメーカーの姿勢が問題なのではなく、そうした土壌を持つ社会が問題なのだと思えてなりません。 … コンシューマーでも最近は大■略のお陰でSLGは比較的大戦物が出し易いようです。 PS2でも「大■略1941」のようなプレイヤーが日本軍担当のソフトも出てきました。 分野の違いこそあれそうした変化は我々ユーザーの支持、要望が市場に反映された結果だと思います。 ライジングサンに対して不買運動というのは極端にしても、 一度メーカーへ今回のようなメールをしてみるのも方法だと思います。 私も含めライジングサンに落胆したユーザーは多いはず… ゲーム市場が低迷している今こそユーザーの意見に耳を傾けてほしいものです。 2.ゲーム(媒体)における大戦物のあり方 マ弾ペイペイさんはゲームによってプレイヤーが 「戦争について誤った認識を持つ」ことを危惧していますね。 MOHに限って言えば、ライジングサンによって「日本=悪 アメリカ=正義」という図式が コンシューマーという「大衆的な媒体」によって広まってしまうという事でしょう。  たしかに映画「パール■ーバー」を観た観客の内容を鵜呑みにしたコメントを聞くにつけ そうしたメディアの持つ怖さというものはわかります。 「ジェームズボンドの様な架空性を…」 というのも受け手にフィクションであるという前提を提示する必要がある という意見だと思います。 では逆に現在の日本社会において 「戦争についての正しい認識」を得るにはどうしたら良いのでしょう。 (何が”正しい”のかは別にして) 歴史の授業を受けることでしょうか? 戦史や体験談を読み聞きすることでしょうか? 少なくとも私は様々なメディアに触れ多くの情報の中から 自分が信じるに足る情報を取捨選択して今に至っています。 私自身調べ始めた最初のきっかけはツクダのボードゲーム「TIGER T」でした。 今の日本社会では大戦物を筆頭に戦争に類するものはタブー視されています。 信長や三国志の時代よりも、祖父の代の時代に接する機会が困難な世の中です。 MOHによって間違った認識が広がる可能性は否定できません。 ですが幾つかの掲示板でMOHがきっかけで戦争を知ろう(学ぼう)と思ったという 主旨の書き込みが見られた事もまた事実なのです。 バイ■ハザードや鬼■者がプレイヤーに歴史に向き直る機会を与えるでしょうか? ライジングサンがきっかけで将来「正しい認識」へ到達する子供は必ず居ると思います。 MOHの中でドイツ兵は話します。 早く休暇がとれないだろうか、昇進の話はどうなったんだろう、と 酒を飲み、歌を歌い、タバコがうまいと語り合います。 「ドイツ=悪」ということだけをアピールしたいのならこのような演出は不要です。 (確かに住民を尋問しているシーンは度々ありますが) ゲームの中とは言え”戦争”で殺さねばならない相手は化け物や異界の存在ではなく、 どこにでも居る普通の人間なのだということをMOHは伝えたいのではないでしょうか。 フィクションでは無い『実際の戦争』という題材であるからこそ プレイヤーに伝わる何かがある、と私は信じています。
◆「御丁寧なレス、感謝致します!」 投稿者:マ弾ペイペイ さん 管理人様、私も小学生の頃、1942でしょうか?1943でしたか? 例の空母からペロ8が飛んで日本機をバタバタと嬲るゲーム、を友人に薦められ愕然とした記憶があります。 内容しかり、製作が日本のソフトだったのが大きな衝撃で父親に釈明を求めたものです。 P38が素人の子供には双発双同の特異体型でインパクトがあり、三菱零戦ではそれが弱い。 その程度の事で深い意味なんてないよというのが父親の論でした。 管理人様のおっしゃる事、確かにそういった経緯も推測できますね。 PS2版が先出でパソコン版がPS2の移植版だったならば大いにあり得ると思います。 確かにゲームソフト販売は単なる商売ですのでそういった感情の介入は無用なのかも知れません。 しかし改めて一部の日本人が金銭を前にそういった大切な物を阻喪させていった事実が悲しいと感じます。 『1ゲームメーカーの姿勢が問題なのではなく、そうした土壌を持つ社会が問題なのだ』 正にこの問題の正鵠を射た意見と感じます。これが改善されないと本当に空虚でしかありませんよね。 同じ敗戦国のドイツやイタリアとの決定的な差だと思います。 ただ過去の過ちに関する事柄を『白眼視』と云う安易な行動で封じ込める・・・だけ。 原爆資料館やひめゆり記念館等悲劇の記録ばかりで決して戦犯博物館の様な物はありません。 未だに日本人は過去に向き合ってなどいないと痛感します。 ゲーム(媒体)における大戦物のあり方ですが、私の中ではこの手のゲームによって間違った認識が浸透する 危惧のみが先行し、全く持っていかに正しい認識を広めるかと云う事を自身で吟味致しておりませんでした。 管理人様の『ライジングサンがきっかけで将来「正しい認識」へ到達する子供は必ず居ると思います。』という下り、 目から鱗が落ちた思いです。私は固定観念からこういったディープな問題はゲームでは所詮無理、 干渉すべきではないと深層心理で判断していたものと思います。軽率でした。 しかしやはりゲームである以上戦争と云う歴史的事実の確実な引用は難しいものがあると思います。 ですがネガティブに捕らえてばかりではなく、少しでも知識的に多くのプレイヤーと対話をし、 より良い理解が得られる様な努力をしていければこの上無いと思います。 管理人様がこういった話題を取り扱って頂けるHPを立ち上げていらっしゃる事、偉大な事だと切に思います。 きっとライジングサン発売後、このHPを訪れる方が多々いらっしゃると思います。 そんな方々に向けたメッセージなどがHP冒頭に一言あるときっと素晴らしいでしょうね。 当初レス送信前実は心配しておりました。MOHを絶賛の攻略サイトだけに、 もし狂信的な軍事気触れの方が管理者で、徹底的に叩かれたらどうしよう・・・、と。 しかし今回レスできた事で管理人様を始め皆様からの貴重な御意見で自分独りでは到達し得なかった 認識を得る事ができました。本当に嬉しく思っております。 ライジングサンというゲーム、私は残念乍ら購入しませんが、倫理的な問題さえなければ私も 軍事資料的価値から勉強の為にも購入してみたかったです。 こちらの皆様は大変軍事に御詳しく、色々お話をしてみたいので、 もし宜しければたまに覗かせて頂ければと思います。 管理人様を始め皆様に大変真摯に接して頂いた事、本当に感謝致しております。 長々とレスしてしまいまして申し訳ありませんでした。(結構疲れました) 最後までお読み下さり本当に有り難うございました。 それではここで失礼致します・・・。
マ弾ペイペイさんはその後書き込みがありませんが、 「そんな方々に向けたメッセージなどが…」と仰ってくださったので、 このページを作成しました。 やはりマ弾ペイペイさんのカキコをそのまま読んでもらうことが一番だと思いましたので。 (もし問題がある場合は削除しますのでご一報ください) この種のゲームには避けては通れない問題だと思います。 フィクションではない悲惨な戦争をコンシューマーゲームとして 「遊びの対象」としていいのかという… 繰り返しますが一連の文章は発売前に書き込まれたものです。 ライジングサンの予約特典DVDはEA社のこうした意見に対する ある種の回答ではなかったかと思います。 「悲惨」の一言で片付けてしまうより、 例えゲームででもその事実に接して向き直る機会が大切なのではないかと思います。 情報化社会では自ら触れようと思わなければ”知らなくていいこと”は 知らないままで終わってしまいます。 それこそが戦争を「風化」させてしまうということではないでしょうか。
TOP BBS 戻 る