501GamePost

※サターンで「ギレンの野望」が発売される前のお話…

ある休日の風景


 休日は前夜からゲーム三昧で早朝から昼にかけて就寝する事が多い。その日も4時ごろベットに潜り込んで前日購入したサターンマガジンを読み始める。
 …と、期待のSSソフト「ギレンの野望」の特集ページになんと公開録音の告知があるではないか!あの「立てよ国民…」と言うギレンの演説の後に続く「ジークジオン」の合唱を公開録音するというのである。ジオニストとしては行くしかない!…が、よくよく見れば、なんと今日が録音日。しかも会場は聞いたこともない場所である。
 悩んだあげく医者も床屋も予定を取り止めて10時ごろ出発。雑誌の略図に示された通りにJRで一路市街地へ。地下鉄を乗り継いでしばし、「セガ・デジタルサーカス」会場直通バスなる物へ到達する。この聞いたこともないイベントの一環として公開録音が行われるらしい。
 臨時のバス停に警備員まで居る割りには乗客が少ないので喜んでいた所、この直通バス、直通と言いながらなぜか一般路線でも停車するので無関係な一般人(土曜日午前中だからか多くが老人)が乗り込んでくる。あげく臨時バス停をめぐるために車内は「その手」の人間と老人で溢れかえるという地獄絵図のような様相を呈した。
 次第に一般人達が降車して車内は怪しさ一色。なぜか私も含めて1人(連れがいない)者ばかりなので静かである。一部後部座席の方から「TMS開発におけるZの影響」というディープな会話が漏れ聞こえてきた。
 公開録音の件はおそらくサターンマガジンのみの掲載であり(少なくともサターンFAN、電撃セガサターンには掲載なし)発売は前日の金曜日である。自分の事もあるのだが、そうそう人は集まるまいと思っていただけに同類がいるのは驚きだった。
 やっと目的地が見えてきた。
「あ、あれぇ…?」
 その昔幾度となく訪れた見慣れたイベント会場がそこにはあった。どうやら生意気にも名称を変更したらしい。こんな事なら車にでもすればよかったと言う想いが
寝不足の脳味噌を駆けめぐる。
 とりあえず会場に到着。会場案内より大きな張り紙に
「明日のSGガールズサイン会入場整理券は明日9時より配布致します。30分前まで列を作らないで下さい」
と言う文面を見てさらに落ち込む。(SGはセンチメンタルグラフティね)
実績のある声優ならともかく発売前のゲームに声を当てている(しかも下手)な新人に熱をあげると言うのは声優に興味なしの私としては理解に苦しむ所だ。
 会場は思ったより狭い。半分がイベントステージで半分が体験版のフリープレイコーナーになっている。しかもなぜかイワン(ソ連人)の曲芸がイベントの合間合間に行われるというワンダーゾーン…。体験版はそこそこたのしめたが今となっては情報にもならないので割愛する。結局時間をもてあましサターン関連の雑誌閲覧コーナーで時間をつぶす事に。途中体験版やポスターの配布もあったのだがどれもパッとしない。そのためか客の回転がはやく、会場の狭さもあまり気にならない程だ。学生服姿が目立つ時間帯になって「飢狼伝説リアルバウト」の勝ち抜き戦が始まる。
 一応ステージの前に床に座るスペースが確保してあってそこそこ盛況である、それをぐるりと立ち見のギャラリーが囲む。結構人気あるのかと感心した。
 勝ち抜き戦の方はテリーばかりが勝ち進んだり、バグが出たり、あげく優勝者が感想を聞かれて
「こいつ(決勝戦の相手)投げバッかでつまんねぇんだよ!」
と本気で怒り出すなど寒々しい内容となった。で、司会のお姉さんが無理矢理幕を引いて終わりとなったその瞬間!
 立ち見をしていたギャラリーがステージに殺到した!
何と飢狼のギャラリーだと思っていたのはみな自分と同じ目的だったのである。
その数およそ100名あまり。中には席を立ちそびれた小学生もいたがほとんどが20代の野郎ばかりである。
どこからともない、「こんなにもサイド3出身者が…」と言うつぶやきに誰かが応える「皆、志は同じだ…」。
怪しさ爆発である。
 待つこと十分、司会のお姉さんの簡単な説明の後バンダイの開発責任者牛島氏が登場した。牛島氏しばし呆然、司会のお姉さんに何度か呼ばれて我に返る。
「こんなに集まるとは思っていなかったので…」
との事。無理もない。
ゲームのプロモーションフィルムの上映の後、いよいよ大型モニターにギレンの演説が流れる。周囲の電子音を圧倒する音量で「ガルマはなぜ死んだ!」である、
イベント会場が一気に怪しい空間へ。残念ながら新作ムービーが間に合わなかったとの事で映画からのカットフィルムである。そのためいちいちブライトやシャアのシーンが入るのが笑えた。
 練習を兼ねてジャンケン大会が行われる。無論「ジークジオン!」と叫んで拳を突き出す訳だが、この練習は効いた。大会の商品が2つしか無く(10人程度しか集まらないと思っていたらしい)、すぐに終わってしまったが周囲をヒートアップさせるのには十分だった。
 収録は予備も含めて3〜4回程録るとの説明であったが、あまりに息の合った連呼に1発OKが出る。(収録担当いわく「文句無し、十分です」との事)
 司会のお姉さんを含め会場全体が呆然とする中、収録終了と同時に見事なばかりの素早さで全員が席を離れる。我にかえった司会者が呼び止める(引き続きなにかのプレゼンだった)が誰一人振り返らない。「ちょっと、何でなの〜っ!」と言うお姉さんの絶叫もむなしくステージ前は空になってしまった。
皆、志は同じらしい。
…ちょっと怖い。
 意気揚々と帰りのバスに乗り込もうとするとバスの前で学生達が何やら相談している。何と今夜は徹夜するので誰が食料の買い出しに行くのかもめているようだ。脳裏に前述のサイン会告知が浮かぶ…
「嘆かわしい…」
そう思わず呟く私の鞄には閲覧コーナーで奪取したSGの綴じ込み付録があったりした。

 
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