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GROW LANSER
− サイト開設記念として仁侠様から頂きました!−


「サンドラ(前編)」



真夜中の王宮内を足早に歩く娘がいる。
「ふぅ、今日もこんな時間までかかってしまったわ。」
王宮魔道士サンドラである。
つい最近魔道士として王宮に上がったばかりで仕事がおもうように
進まないのとその若さで王宮入りしたことによる回りからの
苛めで王宮に入ってからいつもこんな時間に帰らざるえないでいる。
仕事といっても魔術の実験などには参加させてもらえず日々書類整理や
実験データのレポートの代筆などである。
まったくレポートぐらい自分でまとめなさいよね。
と心のなかでぼやく。
とはいうものの同僚はほとんどがもう年老いたものばかりなのでなじめない。
それにくわえてあの若さで王宮入りしたのは国王を惑わしたからとか
実は禁術を使い、若さを保つために人の生き血をすすり何百年も生きてる
魔女だとか噂されていわれもないことで忌み嫌われてしまっている。
「まったく、だれが生き血なんて飲むものですか」
サンドラの声が広い王宮内に響く。
確かにサンドラは異例の若さで王宮に入ったがそれは魔法学園での
成果が認められたため、その裏には大変な苦労があったからである。
その後は疲れた足で足早に門まで向かう。
夜勤の門番に軽い会釈をして家路につこうと思ったがさっきの怒りが
心地よい眠りを妨げるだろう。
そう思ったサンドラは家を通りすぎ街はずれの丘のほうに足を向けた。
そこは見晴らしもよくデートスポットとしても有名な所だ。
以前、丘に入ったときには1組の恋人たちに出くわしたこともある。
ちょうどいいムードだったのに気付かずに近づいてしまったためお互い
かなり恥ずかしい思いをした。
今思い出しても顔が赤くなってしまう。
でも、最近途中の山道にモンスターがでるようになったためこんな夜中には
さすがに誰もこない。
いろいろと考えながら歩いているとみずみずしい空気と水の音が心地よく響いてくる。
もう街の外に出る門まできたのだ。
門を見たが珍しく門番の兵士の姿が見えない。
いつもなら門番を避けるために民家の庭にこっそり入ってそこから丘に続く森に
向かうのだが・・・
「変ね?どうしたのかしら」
いつもと違う異変を感じたサンドラはそっと詰所をのぞいて見る。
が、やはり誰もいない。
何かこの異変の手がかりはないか詰所に入りあたりを見回してみるがやはりそれと
いった異変は感じられない。
ふと机の書類の山に目がいく。
どうやら始末書のようだ。なんだかいろいろと失敗をしてるみたい。
おもわずこれを書いている門番を想像して微笑んでしまう。
興味をそそられてそのうえの一枚を手に取読み出した。
こんな場面をみられたらたとえサンドラでも1日ぐらいの謹慎処分が
出てしまうだろう。
しかし読んで見ると門番のいない理由がわかった。
どうやら急いで書いたようでかなり汚い字だがこうかかれていた。
「すまん、俺の子供が生まれそうなんだ。これを読んだ奴かわりにダイスの奴を
呼んで警備につかせてくれ」
「子供か〜 私、結婚出来るのかな ふぅっ・・・」
一息ため息をつくとさらにしたのほうも読んで見る
そして下のほうにはダイスという男へのメッセージもあった。
「このまえのポーカーの貸しはチャラにしてやる。しっかりみはれよ!
そうそう、出産祝いはポーカーの負け分ぐらいはくれな。」
ちゃっかりした男だとおもいまた笑ってしまう。
「さ、ダイスさんがくるまえに丘にいっちゃわなくちゃね」
独り言だがなんとなく幸せな門番に話しかけるようにつぶやき詰所をでる。
また川のせせらぎが聞こえる。
しかし何か違う。
そしてみずみずしい空気のなかに微かな異臭が漂っている。
「hhぅ・・・」
人ともモンスターともつかない声が橋のしたから聞こえてきた。
「誰・・・」
あまりの怖さに思わず声をかけてしまう。
みすみす相手に自分の存在を知らせてしまってしまったと思いながら
息を殺し相手の様子をうかがう。
が、いっこうに返事どころか反応もない。
相手も様子をうかがっているのだろうか。
もしモンスターならば被害がでないうちに追っ払わなくてはいけない。
勇気をだして音をたてないようにしながらそっと橋の下をのぞける位置に移動する。
「はぁはぁ・・・」
微かだが相手の息使いが聞こえる。
川を見ると真っ赤に血に染まって流れている。
相手はかなりの傷をおっているらしい。
「動かないでください、動いたらあなたに危害をくわえます。」
大きな声でそう忠告するとファイヤーボールの詠唱をしながら川に降りていく。
といっても川まではかなりの高さがあるため壁につかまりながら落ちないように
慎重に降りていく。
たぶん誰かに見られたら笑われるだろうな。
などと考えながら不格好に降りていく。
「ふっ」
相手から鼻で笑ったような声が聞こえてきた。
「なによ、私は王宮魔術士だから体力には自身がないのよ」
と、顔を赤らめながら反論してみる。
しかし相手の反応はない。
ここからなら相手の影はぼんやりみえるが姿まではみえない。
下手に近づいて相手に動かれたらさすがに魔法も唱えられない。
意識を集中して相手の頭上目がけてファイヤーボールを飛ばす。
そしてその頭上で停止させた。
男だった。
それもかなりの大男。どうやら出血は切断された腕からのものらしい。
「あの、大丈夫ですか?」
予想以上の大怪我に近づいて声をかける。
近づいて見てわかったが両目とも切られている。
奴隷だろうか?
しかし奴隷が公認されていたのは遥か昔。
その後、奴隷は全て開放されて自由を手にいれている。
表面上では・・・。
奴隷たちも突然の自由に戸惑い現状のまま仕えるものも数多くいた。
待遇も昔よりははるかによくなったが一部では暴行や過酷な労働が続いている。
さらに近づいてみる。
男はぴくりともしない。
息をしてない・・・
血が肺にたまり呼吸を止めているのだ。
さっきの笑い声も血があふれで吹き出したものだったにちがいない。
サンドラは急いで近づくとできる限りの応急処置をほどこした。
男の体は重いためたいした処置はできなかったが男は微かに息を取り戻した。
「さてと、この人をどうしましょう」
ひとりで運べる重さではないが、兵士に報告すればたぶんこのまま手当もなしに
牢に入れられそのまま息を引き取ってしまうだろう。
「どうしましょう・・・」
はやくちゃんとした処置をしないと本当に助からなくなってしまう。
上に浮いていたファイヤーボールが集中が削がれたために形なく消えていく。
わずかなグローシュがふわふわと光輝いている。
「そうだわ、わざわざ持ち上げなくてもレビテトで運べば力は必要ないわ」
また意識を集中して自分と男にレビテトの詠唱を始める。
グローシュがサンドラの体に集まりじょじょに二人を浮かせていく。
思ったよりも詠唱の疲労は激しく橋の上についた頃には息があがっていた。
しかし橋の上でもたもたしていたら誰かに見られてしまう。
残りの力を振り絞りもう一度意識を集中し詠唱を続ける。
そして自分の家に運びこんだときにはサンドラもふらふらと足元がおぼつかない状態
だった。それでも止血をし看病を続けた。
男の体調が安定した頃には朝日が顔を出していた。
一応安静なので気が付いたときのために簡単な音声メモを魔道具にふきこみ
仕事に向かう。
自分の机につくとすでに山積みの書類がつまれていた。
ため息をつきながらただ黙々と作業をしだす。
やっと朝の書類のめどが立つころになると意識はなかった。
「・・・・さん」
「・・ドラさん」
「サンドラさん」
誰かの声で目を覚ます。
自分が寝ていたとおもいとっさに目を覚ます。
目の前には年老いたしわしわの顔と眼鏡の老婆の顔が目の前にうつる。
「魔術長!・・・あ、あの、すいません・・・」
するとを老婆は顔をくしゃっとくずして笑顔で返事をした。
「ずいぶん疲れてるのね、今日はもう帰って休みなさい」
「でも・・・」
サンドラは躊躇した。
「いいのですよ、ただし明日からは寝てはいけませんよ。明日から私の実験の助手を
してもらうんですからね。」
一瞬、意味がわからなかった。が、すぐに理解し涙があふれそうになった。
「ほ、本当ですか、魔術長。本当に・・・」
たまってた涙が目からあふれ出す。
「えぇ、本当ですよ。これからも書類整理はあるとおもいますがちゃんと定時には
帰れますよ、きっとね。」
「じゃ、そういうことだから今日はもうおかえりなさい。」
「でもこの書類の整理がまだ・・・」
すると後にいた若干若めの魔術士が声をかけて来る。
「大丈夫よ、このくらい私がちゃんとやっといてあげるから。」
「すいません、じゃあおねがいします。」
すまなさそうに深々と頭を下げるサンドラ
「いいのよ、こっちこそごめんね。あんなにいっぱい仕事きてたのに手伝わ
なくって」
「いえ、そんな・・・私の仕事でしたから」
「じゃ、二人とも明日からよろしくたのむわね」
と、いって魔術長は明日必要な器材をかかえると研究所のほうに帰っていった。
「さってと、この仕事は私に任せてあなたは早く帰りなさい。早くしないとまた
いじわる上司が仕事山ほどもってくるわよ〜」
「は、はい!」
慌てて帰ろうと席を立つと彼女はクスクスと笑っていた。
「冗談よ、じゃ、また明日ね〜」
と、まだ笑いながら手をひらひらとふっていた。

帰り際嫌な魔道士達は「早退とはいい身分だな」とか「生き血がきれたからって
逃げないでよね」など野次を飛ばしてきたが「お大事に」と心から声をかけてくれる
研究員達もいたし悪口は全然気にならなかった。

家に帰るとさすがに疲れがまた体を蝕み始めた。
倒れこむようにベットにはいるとそのまま意識は遠のいていった。
気がついたのはもう夕方ぐらいだった。
固いごつごつした枕の感触で目が覚めた。
「ひゃぁ!」
おどろいて声にならない悲鳴をあげる。
疲れで忘れていたが自分のベットには昨日の男が寝ていたのだ。
それに気付かずぐっすりと寝てしまっていた。
しかもいつのまにか男の腕を枕代わりにして・・・
顔から火が出るほど真っ赤になりながら男の様子をうかがう。
まだ、意識は戻ってないらしい。
そのことで少しは落ち着いた。そっとベットを出て夕飯の準備にいこうと部屋を
出ようとしたとき突然声が聞こえた。
「すまないがついでに水をいっぱいいただけないか?」
男である。目を包帯で覆っているため意識があったことに気付かなかった。
「ひゃぁ!!!」
また声にならない悲鳴がさっきよりも大きく部屋に響く。
「すまない、脅かしてしまったかな?」
男はすまなさそうに詫びてきた。
「い、いえ、水ですね。ちょっとまっててください」
足早に部屋を後にするサンドラ。

◆頂いたSSはここまでです!◆
正直あせりましたよ〜。責任重大じゃないっすか。
しかも私的にファンな「サンドラママ」ネタ!
これは『たまには女性中心の描写をしてみぃ!』という仁侠さんの愛の鞭…
と、腹をくくったわけです。はい。
しかし、ほんと仁侠さんて女性描写が上手いなぁ…

▲ここで止めておく▲
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